まずはわかりやすく
短期記憶は、いま必要な情報を一時的に覚える働き
聞いた数字を入力するまで覚えておく。道を尋ね、次の角を曲がるまで行き方を頭に置く。そんな場面に関わるのが短期記憶です。情報を比較的短い間、保っておく働きを指します。[1]
短期記憶
少しの間、覚えておく
一時的に必要な番号や言葉などを、頭の中に保つ働きです。
長期記憶
あとから思い出せる
知識や経験、身につけた技能などが、長い期間保たれる記憶です。
短期記憶と長期記憶は、情報を保つ期間に着目した呼び方です。 ただし、何秒なら短期記憶、何分なら長期記憶と、厳密に線を引けるわけではありません。
短期記憶と長期記憶
2つの記憶の違いを比べてみよう
短期記憶と長期記憶の違いは、情報を保つ期間や身近な使われ方を比べると理解しやすくなります。まずは図で見てみましょう。

短期記憶
- 保つ期間
- 数秒から数十秒程度の一時的な保持が代表例
- 覚える内容
- いま使う番号・言葉・指示など
- 身近な例
- 番号を聞いて入力する
長期記憶
- 保つ期間
- 日・月・年にわたる場合もある
- 覚える内容
- 知識・経験・身につけた技能など
- 身近な例
- 言葉の意味や慣れた操作を覚えている
長期記憶は「必ず忘れない」という意味ではありません。 長く保たれた情報でも、うまく思い出せないことがあります。
記憶の種類は、保持時間だけでなく内容によっても分類できます。言葉の意味を覚える記憶や経験を思い出す記憶も、あわせて読んでみてください。
日常で感じる短期記憶
短期記憶が働くのは、こんな場面
短期記憶は、特別な勉強をしているときだけの働きではありません。私たちは日常のあちこちで、一時的に情報を覚えています。
聞いた番号を入力する
電話番号を聞いてから、入力し終わるまで数字を覚えておく。
頼まれた品物を覚える
「牛乳と卵を買ってきて」と聞き、メモするまで頭に置く。
前の言葉を覚えておく
文の前半を保ちながら、次の部分を読むことにも関わります。
実際の行動には、短期記憶だけでなく、注意やワーキングメモリ、すでにある知識なども関わります。
記憶の全体像を確認するなら、記憶の種類の解説記事も参考になります。
よくある疑問
短期記憶は、何秒・何個まで覚えておける?
教科書では、短期記憶の保持時間を15〜30秒程度と説明することがあります。ただし、これは一定の条件で測った典型的な目安です。情報を繰り返したり、ほかのことを考えたりすると結果は変わります。[1]
古典的な目安「7±2」
Millerが1956年に論じた、短期記憶の研究でよく知られる目安です。ただし、どんな情報でも「7個まで」と決まっているわけではありません。[2]
その後の研究では「約4」
Cowanは、情報のまとめ方などの影響を考慮した研究を整理し、一度に保てる情報のまとまりは3〜5程度という見方を示しました。[3]
数字は、記憶力の点数ではありません。 覚えるものの種類や意味、すでに知っている内容、測り方などによって変わります。人の記憶力を単純に順位づけする数字ではありません。
なぜ忘れてしまう?
さっき聞いたのに、思い出せない理由
覚えていた番号も、少し時間が経ったり、別の番号を続けて聞いたりすると、思い出しにくくなることがあります。こうした忘れやすさには、時間の経過や情報どうしの干渉が関わると考えられています。[1]
別のことに気を取られる
聞いた番号を覚えている途中で、別の会話が始まる場面。
似た番号と混ざる
続けていくつも番号を聞くと、どれがどれか混乱することがあります。
使う場面を失う
なぜその言葉を覚えていたのか、きっかけが思い出せないこともあります。
「忘れた=記憶が完全に消えた」とは限りません。思い出すきっかけが足りない場合もあります。
似ているけれど、少し違う
短期記憶とワーキングメモリの違い
短期記憶は、主に情報を一時的に保つ働きに注目した言葉です。ワーキングメモリは、情報を保ちながら考える・並べ替える・計算するなどの働きも含めて考えます。[4]

数字を少し覚える
聞いた数字を、入力するまで保ちます。
数字を使って考える
途中の数を保ちながら、暗算します。
役割は重なることも
両者の関係は、研究モデルによって異なります。
詳しい比較はワーキングメモリと短期記憶の違いで、働き全体はワーキングメモリの解説記事で確認できます。
勉強に活かすヒント
一度覚えたことを、あとから思い出そう
見た直後には覚えていても、翌日になると思い出せないことがあります。学習では、目の前で覚えた感覚だけでなく、時間を置いて思い出せるかを確かめてみましょう。[5]
短いまとまりに分ける
新しい言葉を一度に詰め込まず、意味を確かめながら学びます。
答えを見ずに思い出す
少し学んだら、いったん資料を閉じて自分の言葉で説明してみましょう。
別の日にも確かめる
一度で終わらせず、時間を空けて思い出す機会を作りましょう。
一つの練習方法で、すべての人が同じ成果を得られるわけではありません。学ぶ内容や自分の進み方に合わせて調整しましょう。
タイピングでも実感しよう
意味を理解して、入力でも確かめてみよう
文章を読むときは、少し前の言葉を覚えておくことが役立ちます。一方、指の動きに慣れることには、くり返し練習して身につく技能も関わります。これは短期記憶だけでは説明できません。
意味を読んで、正確に入力する
- 短い文章を読んで、意味を確かめる
- 無理に急がず、正確さを意識して入力する
- 入力後に、文章の内容を思い出してみる
タイピング練習で記憶力全体が高まると保証するものではありません。理解と操作を、それぞれ大切にしましょう。
よくある質問
短期記憶についてよくある質問
短期記憶と長期記憶の違いは何ですか?
短期記憶は、番号や言葉などを一時的に保つ働きです。長期記憶は、知識や経験、技能などが比較的長い間保たれる記憶です。厳密な秒数で区切れるものではありません。
短期記憶は何秒くらい続きますか?
数秒から数十秒という説明がよく用いられますが、覚える内容や繰り返しの有無、ほかの作業によって変わります。すべての人に共通する決まった秒数はありません。
短期記憶は何個まで覚えられますか?
古典的には「7±2」、その後の研究では3〜5ほどのまとまりという見方もあります。覚えるものをまとめられるか、すでに知っているかなど、条件によって変わります。
短期記憶はワーキングメモリと同じですか?
同じ意味で使われることもありますが、区別する研究モデルもあります。短期記憶は一時的な保持、ワーキングメモリは保持しながら考えたり操作したりする働きに注目します。
短期記憶が弱いと、勉強が苦手になりますか?
一つの記憶の働きだけで、学びの得意・不得意が決まるわけではありません。学習では、理解の仕方や復習、注意の向け方など、さまざまな要素が関わります。
参考資料
参考にした研究・資料
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリの説明は、次の資料を参考にしています。
- OpenStax(2020)「8.1 How Memory Functions」『Psychology 2e』。記憶の段階・短期記憶の保持・長期記憶の基本。
- Miller, G. A.(1956)「The Magical Number Seven, Plus or Minus Two」Psychological Review, 63(2), 81–97。「7±2」の議論の基となった論文。
- Cowan, N.(2001)「The magical number 4 in short-term memory」Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87–114。覚えておける情報のまとまりに関する研究レビュー。
- Baddeley, A.(2012)「Working Memory: Theories, Models, and Controversies」Annual Review of Psychology, 63, 1–29。ワーキングメモリの研究モデル。
- Dunlosky, J. ほか(2013)「Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques」Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58。復習や練習テストの学習効果に関するレビュー。
図解は理解しやすくするために整理したイメージです。脳内の記憶の仕組みをそのまま描いたものではありません。

