ワーキングメモリとは?仕事や勉強との関係をやさしく解説

ワーキングメモリとは

記憶と学習のコラム

ワーキングメモリとは?仕事や勉強との関係をやさしく解説

今聞いたことを覚えながら、次の行動を考える。
そんな身近な場面で働く「ワーキングメモリ」を、
具体例とともにわかりやすく紹介します。

働きの基本勉強・仕事の具体例負担を減らす工夫
まず意味を知る

最初に知っておきたいこと

ワーキングメモリは、覚えながら考える働き

ワーキングメモリとは、必要な情報を少しの間覚えておき、その情報を使って考えたり、作業を進めたりする働きのことです。「作業記憶」「作動記憶」と呼ばれることもあります。[1][2]

たとえば、「12ページを開いて、2番の問題を解き、答えをノートに書いてください」と言われた場面を考えてみましょう。指示を少しの間覚えながら、何から始めるかを考えて行動します。

一時的に覚える

必要な指示を覚えておく

「12ページ」「2番の問題」「ノートに書く」という指示を、作業中に忘れないようにします。

情報を使って考える

順番を決めて動く

ページを開き、問題を解き、答えを書く。今やることを選びながら進めます。

ポイント

ワーキングメモリは、単に「何かを覚えていること」だけではなく、覚えている情報を、その場の判断や行動に使うことにも関係しています。

暮らしの中の具体例

仕事や勉強で、どう使っているの?

ワーキングメモリは、普段の勉強や仕事でも使われています。身近な場面から、その働きを見てみましょう。

01 / 勉強

文章を読みながら意味をつかむ

前の文の内容を覚えながら、次の文を読み、文章全体の意味を考えます。

例:登場人物が何をしたかを追いながら物語を読む。

02 / 計算

数字を覚えながら暗算する

「27+18」を考えるとき、途中の計算結果を覚えながら次の計算をします。

例:27+10=37、37+8=45。

03 / 仕事

口頭の依頼を順番に進める

頼まれた作業を覚え、優先順位を考えながら、一つずつ対応します。

例:資料を確認し、修正し、担当者へ共有する。

04 / 会話

相手の話を聞いて返事を考える

話の前半を踏まえながら最後まで聞き、自分の返事を組み立てます。

例:質問の条件を覚えておき、当てはまる答えを選ぶ。

05 / 文字入力

文章を見て、入力する

画面の文章を見ながら入力するときは、次に打つ文字を確かめたり、前後の文の意味を考えたりします。こうした作業にも、ワーキングメモリの働きが関わることがあります。

例:短い一文を読み、意味をつかんでから正確に入力する。

いろいろな場面に共通すること:必要な情報を少しの間覚え、その情報を使って次にすることを考えています。

よく似た言葉の整理

短期記憶とは何が違うの?

短期記憶とワーキングメモリは、どちらも情報を一時的に覚えておく働きに関係しています。研究によって捉え方は異なりますが、まずは次の例で考えてみましょう。[1]

短期記憶

少しの間、覚えておく

聞いた電話番号を、書き留めるまで覚えておく。

ワーキングメモリ

覚えた情報を使って考える

聞いた数字を覚えながら、順番を入れ替えたり計算に使ったりする。

この二つは深く関係していて、実際にははっきり分けられない部分もあります。詳しくは、ワーキングメモリと短期記憶の違いをご覧ください。

覚えておける量には限りがある

一度にたくさんのことを頼まれると、なぜ混乱する?

ワーキングメモリが一度に扱える情報には限りがあります。初めてのことを覚えながら、別の指示も聞き、さらに周囲の音に注意を向ける。そんな状況では、必要な情報を保ちながら作業を進めにくくなる場合があります。[3]

情報が多いとき

いっぺんに覚えようとする

  • 3つの指示を口頭で聞く
  • 作業中に別の連絡が入る
  • 次に何をするか迷う
整理したとき

目に見える形で順番を決める

  1. 指示をメモする
  2. 最初の1つに取り組む
  3. 終わったら次を確認する

指示が重なったときは、すべてを頭の中で覚えようとせず、書き出したものを見ながら一つずつ進めてみましょう。

今日から取り入れられる工夫

ワーキングメモリの負担を減らす5つの方法

大切なのは、頭の中だけですべてを覚えようとしないこと。作業に必要な情報を見やすく整理すると、取り組みやすくなる場合があります。

01

指示を短く区切る

「問題を読む」「答えを考える」「ノートに書く」のように、行動を分けて順番に進めます。

02

大切なことをメモに残す

買い物や仕事の依頼はチェックリストにします。覚え続ける負担を減らし、確認しながら進められます。

03

お手本や手順を見える場所に置く

初めての作業では、説明を横に置いて確認できるようにします。見直すことは手抜きではありません。

04

一度に取り組む作業を絞る

読むことと別の連絡への対応を頻繁に切り替えるより、まず一つの作業を終えることを意識します。

05

よく使う手順は繰り返し慣れる

繰り返し行う作業は、同じ手順で練習してみましょう。慣れてくると、次に何をするか迷う時間が減ることがあります。

覚えておきたい3つの工夫
「覚える量を減らす」「必要な情報を見えるようにする」「一つずつ取り組む」。今の作業で試しやすいものから始めてみましょう。

自分の生活に置き換えてみよう

勉強と仕事で、こんな工夫を試してみよう

難しい道具を用意する必要はありません。いつもの作業を少し整理するところから始めてみましょう。

勉強するなら

文章題を解くとき

  1. 問題文を短く区切って読む。
  2. わかっている数字や条件に印をつける。
  3. 何を求めるかを一行で書く。
  4. そのメモを見ながら計算する。

問題文のすべてを頭の中で保とうとせず、必要な条件を確認できるようにします。

仕事を進めるなら

複数の依頼を受けたとき

  1. 依頼された内容をメモする。
  2. 期限と優先順位を確認する。
  3. 次に行う作業を一つ選ぶ。
  4. 終わったらリストを更新する。

「覚えておくこと」と「実際に進めること」を分けると、確認しながら取り組めます。

やることが見えると、次の作業を決めやすくなります。まずは取り入れやすい方法を一つ試してみましょう。

Typing Coachでできること

タイピングでも、文字と意味に目を向けてみよう

タイピングでは、画面の文字を見て、入力する文字を確かめ、指を動かします。入力に慣れるほど、一部の操作は意識せず行えるようになります。文章を入力するときは、速さだけでなく、内容を理解しながら正確に打つことも意識してみましょう。

短文タイピングの例

「大切なことは、メモしよう。」

まず文章を一度読み、何が書かれているかを確かめます。そのあと、速さを気にせず、正確に入力してみましょう。

練習するときは:上の一文は、取り組み方をイメージするための例です。実際の練習では、教材に表示される文章を読みながら入力してみましょう。

効果については慎重に

「鍛えれば必ず伸びる」と考えていいの?

ワーキングメモリを使う課題を練習すると、練習した課題や似た課題が上達することはあります。一方で、その成果が成績、仕事、日常生活の幅広い能力にそのまま広がるかについては、研究で慎重な評価が続いています。

2016年に複数の研究結果をまとめた分析(メタ分析)では、ワーキングメモリ訓練の効果が読解や計算など別の能力に広く及ぶという確かな証拠は得られませんでした。健康な成人を対象とした複数のメタ分析をまとめた2024年の研究では、小さな改善が報告されたものの、日常生活でどの程度役立つかはまだはっきりしていません。[4][5]

まず重視したいのは、毎日の作業を進めやすくすること

「能力を高めなければ」と焦るより、メモや手順の整理など、今の勉強や仕事で役立つ方法を選んでみましょう。

よくある質問

ワーキングメモリについてよくある疑問

ワーキングメモリは短期記憶と同じですか?

深く関係していますが、短期記憶が情報を一時的に保つ面を重視するのに対し、ワーキングメモリは情報を保ちながら考えたり処理したりする面を重視します。研究によって用語の使い方には違いがあります。

作業中に指示を忘れるのは、能力が低いからですか?

それだけでは判断できません。指示の長さ、慣れ、周囲の状況、疲れなど、さまざまな条件が関係します。まずはメモや手順の整理を試してみましょう。

子どもの学習ではどう役立てられますか?

一度に伝える指示を短くする、やることを絵や文字で示す、終わった作業に印をつけるといった工夫が考えられます。子どもによって合う方法は異なります。

ワーキングメモリは訓練すれば必ずよくなりますか?

必ずよくなるとは言えません。練習した課題での上達と、学校や仕事など別の場面への効果は分けて考える必要があります。

タイピング練習でワーキングメモリは向上しますか?

タイピングには文字を見て入力する作業が含まれますが、それだけでワーキングメモリが向上すると断定できる研究上の根拠はありません。まずはタイピングの正確さや操作への慣れ、文章への理解を目的に取り組みましょう。

研究・参考資料

この記事で参考にした資料

ワーキングメモリの基本的な定義と、学習・訓練についての説明は、次の資料を参考にしています。

  1. American Psychological Association. APA Dictionary of Psychology: Working memory.学習・推論・理解のために、情報を短時間保ち操作するという定義。
  2. Baddeley, A. (1992). Working memory. Science, 255, 556–559.言語理解や推論などを支えるワーキングメモリの概念を整理した論文。
  3. Young, J. Q., et al. (2014). Cognitive Load Theory: implications for medical education. Medical Teacher.学習中に扱える情報の限界と、余分な負担を減らす指導の考え方を説明したガイド。
  4. Melby-Lervåg, M., et al. (2016). Working Memory Training Does Not Improve Performance on Measures of Intelligence or Other Measures of “Far Transfer”. Perspectives on Psychological Science.ワーキングメモリ訓練の成果が別の能力へ広がるかを検討したメタ分析。
  5. Examining Working Memory Training for Healthy Adults—A Second-Order Meta-Analysis (2024).健康な成人における訓練効果を、複数のメタ分析から評価した研究。

研究結果は、対象者や調べ方によって異なることがあります。紹介した工夫も、ご自身の勉強や仕事に合わせて取り入れてみてください。

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