意味記憶とは?エピソード記憶との違いと覚え方のヒント

記憶と学習のコラム

意味記憶とは?エピソード記憶との違いと覚え方のヒント

「りんごは果物」と知っていることと、昨日りんごを買ったことを覚えているのは、少し違う記憶の働きです。知識や言葉の意味を支える記憶を、身近な例から見てみましょう。

意味記憶の例エピソード記憶との違い覚え方の工夫
2つの記憶を比べる

まずはここから

意味記憶は、言葉や知識を覚えておく記憶

意味記憶とは、言葉の意味や物事の特徴、一般的な知識などについての記憶です。「りんごは果物」「東京は日本の首都」といったことを、学んだ日の出来事を思い出さなくても知っている状態が、一つの例です。[1]

意味記憶

「知っている」

言葉や知識の記憶

物の名前、意味、特徴、知識のつながりを覚えています。

例:りんごは、甘みや酸味のある果物です。
エピソード記憶

「経験した」

出来事についての記憶

自分が経験した場面や、そのときの状況を思い出します。

例:昨日、家族とりんごを買いました。

意味記憶もエピソード記憶も、長期記憶に関わる種類です。どちらか一方しか使わないわけではなく、実際の生活では関係し合っています。[2]

似ている2つの記憶

意味記憶とエピソード記憶は、何が違う?

意味記憶とエピソード記憶は、何を思い出しているかに注目すると違いが見えてきます。意味記憶は一般的な知識、エピソード記憶は自分が経験した出来事に関わります。[1][2]

意味記憶は「りんごは果物」といった一般的な知識、エピソード記憶は「昨日りんごを買った」といった体験を思い出す例を比較した図。 意味記憶とエピソード記憶をりんごの例で縦に比較した図。
同じ「りんご」を例に、知識と出来事の違いを整理しています。

意味記憶

「知っていること」が中心です。いつ覚えたかを思い出さなくても、言葉の意味や知識を説明できます。

エピソード記憶

「自分が経験した出来事」が中心です。いつ、どこで、誰と何をしたかなどの状況を含むことがあります。

2つの記憶は、はっきり分かれないこともあります。 旅行で見た景色の知識が残るように、体験を通じて知識が増えることもあります。両者は関わり合うと考えられています。[3] 体験の記憶を詳しく知りたい方は、エピソード記憶の解説記事も参考にしてください。

身近な例から見る

意味記憶は、毎日の生活で使われています

意味記憶は、学校の勉強だけでなく、会話や買い物、仕事など、日常のさまざまな場面で役立っています。

01 / 言葉

言葉の意味がわかる

海には塩分を含む水が広がっていると知っている。初めて聞く言葉も、知っている言葉と結びつけて理解する。

02 / 一般的な知識

場所や物事を知っている

地名や食べ物の特徴、学校で学んだ事柄など、特定の日の体験を思い出さなくても説明できる。

03 / 概念

仲間や違いを区別する

りんごとみかんは果物、にんじんは野菜というように、物の特徴を手がかりに考えられる。

04 / 学んだルール

知識を使って判断する

言葉の使い方や計算の決まりなどを知り、問題を解くときに役立てる。

知った場面の記憶がなくても、知識は残ることがあります。

例えば「日本の首都は東京」と答えられても、最初にどこで教わったかは覚えていないことがあります。

記憶の種類を幅広く知りたい方は、記憶の種類の解説記事もあわせて読むと理解しやすくなります。

知識を結びつける

知っている言葉を、別の知識とつなげてみよう

意味記憶では、言葉や概念のつながりも大切です。例えば「光合成」を説明するとき、植物・光・水・二酸化炭素など、関連する言葉を思い浮かべることがあります。[1]

光合成という言葉を中心に、植物・光・水・二酸化炭素・養分・葉を関連する知識として配置した図。 光合成と植物・光・水・二酸化炭素・養分・葉の関係を縦方向に整理した学習用図解。
言葉の関係を整理するための学習例です。実際の脳内の記憶の配置を示したものではありません。

言葉を覚えるだけなら

「光合成」という言葉を見て、読み方がわかる。

意味まで考えるなら

植物が光を利用する働きについて、周りの知識と結びつけて説明する。

ひとつの知識から、質問を広げてみましょう。「これは何?」「どんな特徴がある?」「似たものと何が違う?」と考えると、自分がどこまで理解したかを確かめられます。

学習に活かす

意味を理解して、覚えるための4つのヒント

知識や言葉を覚えたいときは、何度も眺めるだけでなく、意味を確かめ、思い出す練習を取り入れてみましょう。練習テストなどによって学んだ内容を取り出す方法は、理解や記憶の定着を支えることが研究されています。[4]

01

自分の言葉で説明する

用語を丸暗記する前に「どんな意味?」「どんなときに使う?」と、自分なりに言い換えます。

02

身近な例と結びつける

知らない言葉も、普段の生活にある物や出来事を手がかりにすると理解しやすくなります。

03

答えを隠して思い出す

説明を読んだら、いったん閉じて何も見ずに意味を言えるか試してみましょう。

04

別の日にも確かめる

覚えた直後だけで終わらず、時間をあけて同じ問いに答えられるか確認します。

自分に合う復習方法を見つけましょう。

暗記ノートの作り方では質問と答えの分け方を、分散学習では復習する間隔を紹介しています。復習日を決めるなら復習スケジュールの作り方も参考になります。

覚えやすい方法や必要な時間は、人や学ぶ内容によって異なります。自分に合う方法を少しずつ見つけていきましょう。

学びを言葉にする

文章の意味を読んで、タイピングでも確かめてみよう

タイピングでは、文章を読み、意味を確かめながら入力することもできます。例えば「りんごは果物です」と入力するとき、文字を追うだけでなく、文の意味も考えてみましょう。意味を理解することと正確に指を動かすことは、同じではありません。

読んで、意味を考えてから入力

短い文章で、理解を確かめる

  1. 一文を読み、何を伝えているか考える
  2. 急がずに、正確さを意識して入力する
  3. 終わったら、自分の言葉で意味を説明してみる

タイピング練習だけで意味記憶や記憶力全体が向上すると保証するものではありません。

よくある疑問

意味記憶についてよくある質問

意味記憶とは簡単にいうと何ですか?

言葉の意味や一般的な知識、物の特徴などを覚えている記憶です。「海は水が広がる場所」「りんごは果物」と知っていることなどが例です。

意味記憶とエピソード記憶の違いは?

意味記憶は「知っている内容」、エピソード記憶は「自分が経験した出来事」に注目した分類です。実際には両者が関わり合うこともあります。

意味記憶は長期記憶の一種ですか?

はい。一般的な知識や言葉の意味に関わる記憶として、長期記憶の一種に分類されます。記憶の分類には複数の考え方があります。

覚えた場面も意味記憶に含まれますか?

知識を持っていることと、いつどこで学んだかを思い出すことは区別できます。いつ覚えたかを忘れていても、言葉や事実の意味を知っている場合があります。

言葉の意味や知識を覚えるコツは?

言葉を自分の言葉で説明したり、身近な例と結びつけたり、答えを見ずに思い出す練習を取り入れる方法があります。内容に合わせて、時間をあけた復習も試してみましょう。

タイピングは言葉の学習に役立ちますか?

タイピング中に文章の意味を確かめることはできます。ただし、入力するだけで言葉の意味を覚えられるとは限りません。わからない言葉を調べたり、自分の言葉で説明したりすることも大切です。

参考資料

参考にした研究・資料

意味記憶とエピソード記憶の違い、知識の整理、学習方法の説明は、次の資料を参考にしています。

  1. Patterson, K., Nestor, P. J., & Rogers, T. T.(2007)「Where do you know what you know?」Nature Reviews Neuroscience, 8, 976–987。意味記憶と概念的知識の研究レビュー。
  2. Tulving, E.(2002)「Episodic Memory: From Mind to Brain」Annual Review of Psychology, 53, 1–25。体験の記憶とほかの記憶の区分。
  3. Renoult, L. ほか(2019)「From Knowing to Remembering: The Semantic-Episodic Distinction」。意味記憶とエピソード記憶の共通点・相違点に関する研究レビュー。
  4. Karpicke, J. D., & Blunt, J. R.(2011)「Retrieval Practice Produces More Learning Than Elaborative Studying With Concept Mapping」Science, 331, 772–775。学んだ内容を思い出す練習と理解についての実験研究。

本文の図解は、記憶の違いを理解するための説明図です。脳の中の記憶の位置や実際の働きをそのまま示すものではありません。

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