エビングハウスの忘却曲線とは?正しい意味と効果的な復習方法

忘却曲線を学ぶイメージ。日本人女性が書斎で学習カードを確認している。

記憶と学習のコラム

エビングハウスの忘却曲線とは?正しい意味と効果的な復習方法

覚えたはずなのに、翌日には思い出せない。そんな経験はありませんか。忘却曲線の研究は、記憶が時間とともにどう変わるかを考える手がかりになります。グラフの正しい読み方から、学びに役立つ復習の工夫まで紹介します。

忘却曲線の意味節約率とは復習のヒント
忘却曲線を知る

まずはここから

忘却曲線は、何を示している?

エビングハウスの忘却曲線は、心理学者ヘルマン・エビングハウスが行った記憶の実験から知られるようになった曲線です。学んでから時間が経つと、同じ内容を再び覚えるときに得られる「手間の節約」が小さくなる傾向を示しています。[1][2]

忘却曲線からわかること

時間とともに変わる

覚え直す手間の変化

学習から時間が空くと、再び覚えるときの手間が増えやすいことを示した研究です。

大切なのは、記憶の変化を調べた実験の条件も知ることです。
間違えやすい読み方

「何%忘れた」ではない

正答率とは別の数字

元の実験で中心となった「節約率」は、覚え直す際に省けた学習の手間を示します。

誰もが同じ割合で忘れるという意味ではありません。

先に知っておきたいこと。 よく見かける「1時間後に何%忘れる」という説明を、そのまま自分の記憶力に当てはめる必要はありません。

研究の背景

エビングハウスは何を調べたのでしょう?

エビングハウスは1885年の著書で、記憶を実験的に調べた研究を発表しました。意味のない音節の並びを自分で覚え、しばらく時間を置いてから、もう一度覚え直す実験を行いました。[1]

まず、覚えられるまで学ぶ

エビングハウスは、決められた音節の列を繰り返し覚え、最初の学習にかかった時間や回数を記録しました。

時間を置いて、覚え直す

一定の時間が経った後で同じ内容を学び直し、最初よりどれだけ手間が少なくて済んだかを比べました。

この実験の特徴
主に研究者本人が、意味のない音節を使って調べたものです。学校の授業や日常生活で覚える内容と、条件が同じとは限りません。

グラフを正しく読む

忘却曲線は、どんな形をしている?

よく知られる忘却曲線は、学習して間もない頃に変化が大きく、その後は変化が緩やかになる形で描かれます。次の図では、数値ではなく曲線の特徴を示しています。

時間が経つにつれて再学習の節約率が小さくなる傾向を表す概念図。実験の測定値は示していない。 学習後の経過時間と再学習の節約率の関係を、数値を使わず縦長に示す概念図。
曲線の形を説明するためのイメージです。原著や追試の測定値をそのまま描いたものではありません。

学習から間もない時期

学んだ内容を覚え直すとき、最初の学習より手間が少なくて済むことがあります。

時間が経ったあと

同じ内容を覚え直す際の手間が増える傾向があります。ただし、変化の大きさは学習内容や条件によって異なります。

このグラフだけで、一人ひとりの忘れ方がわかるわけではありません。 また、一度思い出せなくなった内容でも、再学習が初めてより楽になることがあります。[2][3]

数字の意味を知る

「節約率」とは何のことでしょう?

節約率は、学んだ内容を覚え直すときに、最初の学習と比べてどれくらい手間を省けたかを表します。例えば、最初に覚えるのに10回、同じ内容を覚え直すのに6回かかったとしましょう。

初回10回、再学習6回という仮の例から40%の節約率を計算する図。正答率とは異なる。 最初10回、再学習6回という仮の例を縦型に表示し、節約率40%の計算を説明する図。
計算のしくみを伝えるための仮の例です。実際の研究で得られた数値ではありません。
この例の節約率

40%

覚え直す手間が少ない

最初の10回に対して、もう一度覚えるには6回で済みました。差の4回が節約された分です。

混同しないポイント

正答率ではない

「40%覚えた」ではない

節約率40%は、4割正解した、あるいは4割の情報を覚えていたという意味ではありません。

思い出せないことと、完全に消えたことは同じではありません。 以前学んだ経験が、再び学ぶときの助けになる場合があります。[1][3]

誤解しやすいポイント

忘却曲線について知っておきたいこと

忘却曲線のグラフは便利ですが、数字や曲線だけを見て判断すると、元の研究の意味から離れてしまうことがあります。

「20分後に何%忘れる」は決まりではない

広く出回っている忘却率の数字を、全員が同じように忘れる割合と考えるのは適切ではありません。

覚える内容によって違う

意味のない音節と、理解しながら学んだ言葉や経験とでは、覚え方や思い出し方が異なります。

復習の日程は一つではない

覚えたい期間や内容、思い出せたかどうかによって、適した復習の間隔は変わります。

2015年には、エビングハウスの方法を再現して忘却曲線を調べた研究も報告されています。ただし、追試でも一人の参加者が音節を学び直す方法が使われており、すべての学習場面にそのまま当てはめられるものではありません。[2]

研究を学習に活かす

忘却曲線から考える復習の工夫

忘却曲線は「いつ復習すれば必ず覚えられる」という予定表ではありません。それでも、学んだ内容を後から確かめ直す大切さを考えるきっかけになります。

HINT 01

日を分けて振り返る

同じ日に何度も読み返すだけでなく、別の日にも確かめる時間をつくります。

HINT 02

答えを見ずに思い出す

読む前に「何を覚えているかな」と自分に問いかけ、思い出してから答えを確認します。

HINT 03

覚え具合に合わせて復習する

覚えていなければ早めに確認し、よく覚えていれば少し間隔を空けてみましょう。

日を空けて復習する方法や、答えを見ずに思い出す練習には、学習を助ける効果が研究で報告されています。ただし、復習に適した間隔は、いつまで覚えておきたいかによっても変わります。[4][5]

復習の日程を具体的に決めたい方へ。 復習スケジュールの作り方では、予定表の例と調整方法を紹介しています。日を分けて学ぶ考え方は分散学習の記事で詳しく解説しています。

今日からできること

自分に合った復習を始めてみよう

特別な道具がなくても、短い時間から試せます。まずは、学んだことを少しだけ思い出すところから始めてみましょう。

01 / 学んだ日に

大事なことを一つ選ぶ

覚えたい言葉や考え方を、一つの質問にしてみます。

02 / 別の日に

答えを隠して考える

ノートを開く前に、自分の言葉で説明できるか確かめます。

03 / 答え合わせ

迷ったところを見直す

思い出せなかった部分を確かめ、必要なところだけ復習します。

04 / 次の一歩

次の確認日を決める

無理なく続けられる日を選び、覚えていたかを次回も確かめます。

質問と答えを分けてまとめる方法は、暗記ノートの作り方でも紹介しています。

言葉を通して学ぶ

記憶の仕組みを学びながらタイピングも楽しもう

記憶や復習について学んだ言葉を、タイピングでも入力してみませんか。意味を確かめながら文字を打つことで、学習内容を振り返る機会にもなります。

まずは一文ずつ

覚えた言葉を使ってみる

  1. 忘却曲線について印象に残った言葉を選ぶ
  2. その意味を自分なりに説明してみる
  3. 短い文章を、正確さを意識して入力する
  4. 別の日にも、覚えているか確かめる

タイピングの速さだけでなく、学んだことを振り返る時間も大切にしましょう。

よくある疑問

忘却曲線のよくある質問

エビングハウスの忘却曲線とは?

覚えた内容を、時間を置いてもう一度学ぶときに、どれだけ手間を省けたかを調べた研究から知られる曲線です。

20分後に何%忘れるのですか?

元の実験で使われた節約率は、覚え直す手間を表すもので、忘れた情報の割合ではありません。特定の数字が、すべての人に当てはまるわけでもありません。

節約率と記憶の正答率は同じですか?

いいえ。節約率は再学習にかかる手間の変化を示します。一方、正答率は問題にどのくらい正しく答えられたかを示します。

忘却曲線を使えば必ず覚えられますか?

忘却曲線を知るだけで、必ず覚えられるわけではありません。学ぶ内容や自分の理解度に合わせて、思い出す練習や復習を取り入れてみましょう。

何日おきに復習するのがよいですか?

全員に共通する日数はありません。覚えておきたい期間や、前回どのくらい思い出せたかを参考に調整します。復習予定の例も参考にしてください。

タイピング練習にも応用できますか?

練習内容を別の日に振り返る習慣は、学びを続けるうえで役立ちます。ただし、知識の記憶と指の技能の習得は同じではありません。指の動きについては手続き記憶の記事で解説しています。

参考資料

参考にした研究・資料

忘却曲線の元の研究、再現研究、復習方法に関する研究レビューを参照しました。

  1. Ebbinghaus, H.(1885/英訳1913)「Memory: A Contribution to Experimental Psychology」York University公開版。音節学習と再学習による記憶の測定。
  2. Murre, J. M. J. & Dros, J.(2015)「Replication and Analysis of Ebbinghaus’ Forgetting Curve」PLOS ONE, 10(7), e0120644。忘却曲線の追試。
  3. Nelson, T. O.(1985)「Ebbinghaus’s contribution to the measurement of retention: savings during relearning」Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 11(3), 472–479。節約率という測定方法の検討。
  4. Cepeda, N. J.ほか(2006)「Distributed Practice in Verbal Recall Tasks: A Review and Quantitative Synthesis」Psychological Bulletin, 132(3), 354–380。分散学習と復習間隔に関する研究レビュー。
  5. Dunlosky, J.ほか(2013)「Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques」Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58。学習方法の有効性を比較したレビュー。

図解は考え方を理解するために作成したものです。原著の数値・実験グラフをそのまま再現したものではありません。

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